99%以上が加入!建設業における「社会保険」とは?
「そもそも『社会保険』ってよく分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私は長年勤務先に任せっきりでまったく理解していませんでした。
R2年10月の建設業法の改正により、建設業許可の要件として「適切な社会保険の加入」が加えられました。
ここではまず「社会保険」とは何なのかについてご説明いたします。
実は社会保険の加入は、求められている要件であるだけでなく、社員や会社の幸せに繋がるものなのです。
この記事のポイントです
- 適切な社会保険への加入は法律で定められており、建設業許可の要件でもあります
- 社会保険には「医療保険」「年金保険」「雇用保険」の3つがあります
- 法人・個人事業主の違い、従業員数などによって加入すべき保険は変わります
適切な社会保険への加入は建設業許可の要件になりました
以前の建設業界では社会保険の未加入企業が多く存在していました。会社としては経費を掛けたくない、また一部の労働者側にも社会保険により手取りが減ってしまうことを望まない、という双方の思惑が一致していたことも考えられます。
しかし、そもそも社会保険の加入は法律で定められており、会社側も労働者側も違法の状態です。
また社会保険がないことにより労働者が医療や年金が必要になった際に保証されず、このような労働環境が敬遠されて若年層の労働者が減少する、という業界にとって深刻な問題となってきました。
そこで国土交通省は社会保険の加入促進に取り組み、その一環として建設業許可の要件に加えることとなりました。
国交省が令和2年10月に全国の約23,000社、約85,000人に対して行った調査によると、適切な社会保険に加入している企業は99%となり、鹿児島においても99%の企業が加入しています。
では「社会保険」について具体的にご説明いたします。
まず建設業における社会保険とは以下の3つから成り立ちます。
- 医療保険
- 年金保険
- 雇用保険
医療保険とは
①医療保険とは、病気やケガで通院したり入院したりする際に、医療費の負担を軽減してくれる制度です。
医療保険は国の制度である「公的医療保険」と個人で別途加入する「民間の医療保険」があり、日本では公的医療保険を誰もが加入する「国民皆保険制度」を採用しています。
一方民間の医療保険は、希望する個人が別途保険料を掛けることにより、病気やケガの際に契約内容に応じた金額が給付されることになります。
皆さんが病院に行かれた際に提示する「保険証」は公的医療保険に加入していることの証で、それによって必要な治療費の一部のみ負担すればよくなります。
逆に健康保険に加入していなければ、治療費は全額自己負担となってしまいます。70歳未満は3割負担ですので、全額負担であればあなたの治療費は3倍以上になってしまいます。
この公的医療保険には、会社に勤務する方やその家族が入る「健康保険」、自営業者、農林水産業、パート、アルバイトの方とその家族が入る「国民健康保険」があり、いずれかに加入することが求められています。
建設業においても、法人、または従業員が5人以上の個人事業主は、従業員を下記のいずれかに加入させる義務があります。
・協会けんぽ
・健康保険組合
・適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保など)
また従業員が4人以下の個人事業主、また一人親方など一人で事業をされている方は、雇用主・従業員関わらず、個人の責任において以下のいずれかに加入しなければなりません。
・国民健康保険
・適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保など)
年金保険とは
②年金保険とは、老後の暮らしをはじめ、事故で障害を負ったときや、一家の働き手が亡くなったときに、保険料や税金によって暮らしを支え合う制度です。
年金保険には加入義務のある公的年金と、個人の意思で加入する私的年金があります。
公的年金には20歳以上60歳未満のすべての方が加入する「国民年金」と会社員や公務員の方が加入する「厚生年金」があります。つまり会社員・公務員の方は、国民年金と厚生年金の両方に加入することになります。
国民年金に加えた厚生年金に加入するということはその分保険料が増えることになりますが、国民年金の保険料はすべて自己負担なのに対し、厚生年金の場合は会社が半分負担してくれます。
二段構えで入っている分、会社員・公務員は将来受け取る年金は大きくなります。
一方会社側として雇用している従業員を厚生年金に加入させる義務があるため負担が増えてしまうことになります。
建設業においても、①医療保険と同様に、法人、または従業員が5人以上の個人事業主は、従業員を厚生年金に加入させる義務があります。
また従業員が4人以下の個人事業主、また一人親方など一人で事業をされている方は、雇用主・従業員関わらず、個人の責任において国民年金に加入しなければなりません。
雇用保険とは
③雇用保険とは、失業された方や教育訓練を受けられる方などに対して必要な給付を行い、労働者の生活・雇用の安定と就職の促進を行う制度です。
ハローワークで給付される、いわゆる「失業保険」はこの雇用保険の制度の一環になります。
雇用保険料は事業主と従業員が分担して負担します。建設業における保険料は年間の人件費の1.2%となり、うち0.8%を事業主、0.4%を従業員が負担します。
雇用保険は原則として週20時間以上、31日以上雇用される従業員がいる場合は事業主が加入しなければなりません。ただし法人の役員、個人事業主、個人事業主と同居の労働者は対象外となります。
建設業においても、従業員が1人以上いる法人および個人事業主は雇用保険に加入しなければなりません。逆に言うと、役員しかいない法人、一人親方など一人で事業をされている方、個人事業主でも同居家族だけが従業員の場合は雇用保険に加入する必要はありません。
今回は「社会保険」とはなにか、建設業にとってどのような位置づけなのかについてお話しました。
原則社会保険とは加入義務が法律で定められており、社会から求められていると言えます。
また建設業許可の要件であるとともに、元請業者は下請業者が適切な社会保険に加入するよう指導する、また社会保険に加入していない作業員を現場に入場させないなどの規制があります。
つまり元請業者は適切な社会保険に加入していない下請業者に対して発注しないこととなり、加入していなければ売上がなくなってしまいます。
従業員にとっても、適切な社会保険の加入がなければ、病気やケガをした際、高齢になった際、失業した際などの保障が受けられないこととなり、安心して働くことができなくなってしまいます。
社会保険への加入は保険料負担や事務作業なども必要となりますが、従業員から、元請業者から、また社会から求められているものであり、それが建設業としての幸せの礎となるものです。
建設業許可の要件ではありますが、複雑な社会保険の制度ですので、自分の会社どの保険に入ればいいのか、よく分からないという方はお気軽にお尋ね下さい。
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