「経験」の証明が最難関! 経営業務の管理責任者の確認資料

建設業許可の要件のうち、最も満たすことが難しいと言われているものが「経営業務の管理責任者」についてです。 

このことは、条件を満たすことが難しいのに加え、条件を満たしていても証明することも難しいからです。逆に言うと、条件を満たす方がたくさんいらっしゃる一方、その証明書類が揃わないことで要件を満たせない方もいらっしゃいます

今回は多くの建設業者が該当する、一般建設業許可を取得するにあたり、「経営業務の管理責任者」として認められるために必要な証明書類についてお話します。

改めて経営業務の管理責任者として認められるための条件は以下の2点です。

  1. 常勤の役員であること
  2. 建設業に関し5年以上の経営経験があること

この②については、他の業種の経営経験を活かす場合は、役員に準じる地位で行った業務で認められる場合など他にもありますが、ここでも多くの建設業者が利用される「建設業に関し5年以上の経営経験があること」の方法についてご説明します。

「常勤であること」を証明する資料

法人の場合は健康保険証のコピーにより、記載されている会社名が申請する会社と一致することを確認します。

ただし、75歳以上の方後期高齢者医療制度の対象者となっており、健康保険証には会社名が記載されていません。その場合は代わりに住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)により申請者と申請会社を確認します。

個人事業の場合は国民健康保険の保険証のコピーに加え、直近決算の確定申告書のコピーも必要となります。

「役員であること」を証明する資料

法人の場合、発行日から3ヶ月以内の登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)により証明します。

個人事業の場合、「常勤」であることの証明に使用した、直近の確定申告書のコピーで証明します。

「建設業に関し5年以上の経営経験があること」を証明する資料

ここではア:経営していた会社が建設業許可を有していた場合イ:建設業許可を有していなかった場合に別れます。

ア:建設業許可を有していた場合

その期間を証明できる建設業許可通知書のコピー、または建設業許可申請書のコピーが必要になります。

例えば平成26年4月から令和2年3月までの6年間、建設業許可を有していた建設業者で役員を勤めたことを証明したい場合、その6年間の期間前・期間中・期間後に3回分許可通知書が発行されています。平成23年に許可更新された場合、5年後の平成28年、さらに5年後の令和3年に更新されており、この許可通知書があればその6年間は建設業許可を有していた建設業者であることの証明となります。

イ:建設業許可を有していなかった場合

次には、証明したい期間中の工事に関する書類、具体的には以下のいずれかによって工事をしていたことを証明します。

  • 請負契約書
  • 注文書+請書
  • 請求書+入金が証明できる通帳

いずれにも日付が記載されていますので、少なくとも5年分を準備しなければなりません。

「請負契約書」は発注人・請負人ともに署名・押印がされていますので、これ1枚で証明されます。

一方「注文書」「請求書」は注文人のみ、「請書」は請負人のみ記載されているため、セットにする必要があります。

なお「請求書」に対して、それに基づいて入金されたことが通帳によって確認できれば証明となります。

以前所属していた会社での経営経験を証明する場合が難しい

現在所属されている会社の「経営業務の管理責任者」になろうとする場合は、その会社がこれらの書類を適切に管理していれば証明はそれほど難しくありません。

問題となるのは、「以前所属していた会社での経営経験を証明する場合」です。

まずその会社が書類を適切に管理しているかどうか、という問題がひとつ。

更に大きな問題は、「これらの書類をその会社から借り受けることができるか」です。

以前所属していた会社を円満退社してそれ以降も関係性が良好の場合はいいですが、もし以前所属していた会社との関係が良くない場合はなかなか借り受けることをお願いしにくいと思います。

このような場合は何とか理解を得られるよう誠心誠意お願いする、またその際は依頼する行政書士に同席してもらい、行政書士から書類の必要性や守秘義務などを説明することで協力を得られる可能性もあります。

以前所属していた会社が存在しない場合

また場合によってはその会社は倒産や廃業をして書類が借り受けられない場合もありえますが、この場合は非常に難しくなります。

まず「役員であったことの証明」については、会社の閉鎖謄本で証明することが可能です。この場合はその会社の所在地を管轄する法務局で閉鎖謄本を取得することができます。

しかし「建設業に関し5年以上の経営経験があること」を証明する資料は許可を得ていた会社であれば建設業許可通知書のコピー、許可を得ていない会社であれば契約書、注文書+請書、請求書+通帳などでの証明が必要ですが、いかんせん存在しない会社であればこれらの書類が残っている可能性が低くなります

このような場合でも、当時の役員に書類の有無を確認する、会社の清算に携わった弁護士に確認する、金融機関に取引記録を確認する、などの方法によって証明につながる可能性があります。この場合はご自分ですべてすることは難しいと思われますので、行政書士に依頼することが望ましいと思われます。

チェック まとめ

今回は「経営業務の管理責任者」として認められるために必要な証明書類についてお話しました。

建設業許可の要件の中でも、最もクリアすることが難しいのがこの「経営業務の管理責任者」であり、その理由は「建設業に関する5年以上の経営経験を証明する書類を集めることが難しいからです。

ここまで紹介する書類が揃わなかった場合でも、役所などの保管する書類などで証明できる場合もあります。

また「建設業に関し5年以上の経営経験があること」以外であって経営経験と認められる方法もあります。認められるための要件が厳しく、また集める書類もかなり多くなるため、事前に行政と打ち合わせする必要もありますが、その他の方法を試されたい場合はお問い合わせ下さい。

もし建設業許可の取得を考えられている方は、まず自社でご説明した書類を適切に管理することを心がけていただきたいと思います。